SANKUNET サンクネットグループ

情報漏えい対応の現場から|確認状態の整理

「漏えいした」と「漏えいした可能性がある」は同じではない

確認済み・未確認・調査の限界を、説明できる形に整理する

執筆:株式会社サンクネット 個人情報漏えい対応支援担当
制度・参考資料確認日:
公開日:

説明の根拠を、そろえる

事実範囲判断
用語を危険度の序列に並べる図ではありません。

調査担当から「流出の痕跡は見つからない」と言われた。委託先からは「影響の可能性を調査中」と連絡が来た。窓口では、どこまで確かなこととして説明できるのでしょうか。

言葉を強くするか弱くするかではなく、確認した事実、根拠、範囲、時点をそろえます。調べていないことと、調べた結果分からなかったことも分け、法的な判断と会社が説明できる内容を確認します。

最初に押さえる3つのこと

  1. 論点ごとに分けるアクセス、対象情報、原因、二次被害を一つにしない。
  2. 確認の範囲を添える資料、期間、確認時点と、調べられない部分を残す。
  3. 説明と判断をつなぐ承認済みの表現へ反映し、追加判明時は以前の回答へ戻す。

1.「何が起きたか」と「何を調べているか」を別にする

「調査中」は作業の状態であって、漏えいの有無を示す結論ではありません。漏えいが確認された後も、原因や対象人数は調査中になり得ます。反対に、障害を調べているだけで、漏えいしたと決まるわけでもありません。

本記事では、確認済み、未確認、疑われる理由、調査の限界を分けて扱います。これらは情報整理のための区分です。「可能性」「おそれ」「疑い」を、どの会社にも共通する強弱の段階や確率として並べるものではありません。

「漏えい等のおそれ」には制度上の判断があり、その時点の事実に基づき個別に検討します。一方、担当者が日常語で使った「可能性があります」が、そのまま法的判断を表すとは限りません。用語だけで判断せず、何を根拠に、何を疑っているのかを確認することが出発点です。[1]

図1 四つは「危険度の段階」ではなく、別々に記録する情報

確認済みの事実資料・記録などで何を確かめたか
疑われる理由どの事実から、何が考えられるか
未確認の事項まだ確かめられていない項目は何か
調査の範囲・限界対象期間、資料の有無、確認できない範囲

同じ事案に四つが併存します。「調査中」を選んだことで、確認済みの事実を伏せるものではありません。

社内向けの状況一覧でも、「漏えいなし/あり」の二択だけでは足りません。項目ごとの状態と判断担当を残せる形にします。

2.一つ確認できても、原因・人数・二次被害まで確定しない

確認は、事案全体ではなく論点ごとに行います。不正なアクセス、情報の閲覧可能性、持ち出し、対象情報、対象者、実際の悪用は、同じ一つの事実ではありません。

例えば「不正なログインを確認した」と説明されたら、どのアカウント・サービスへのログインか、その権限で何が表示されるか、当該アクセスで何が分かっているかを調査担当へ聞きます。「侵入を確認した」を、窓口が「全データが流出した」へ広げてはいけません。

逆に、ダウンロードの記録がないことだけで漏えいを否定するのも避けます。個人情報保護委員会は、誤送信や誤公開について、第三者に閲覧されていないことが確認できる場合と、相手の取扱いやログ等が確認できない場合を分けています。公開停止や回収だけで、過去の閲覧まで否定できるわけではありません。[2]

事故の入口
不正アクセス、誤送信、誤公開等について、実際に確認された行為・設定・記録を整理します。
情報と対象の範囲
情報項目、対象期間、閲覧可能だった範囲、確認済みの対象者と照合中の対象を分けます。
原因と二次被害
侵入方法や原因の確定、悪用の申告、実被害と今回の事故との関係を別々に確認します。

対象者から「自分の名前を使ったメールが来た」と申告があっても、それだけで今回の事故に起因すると認定しません。申告を受け付けることは必要な確認の入口です。具体的な受付は二次被害申告の記事で扱っています。

3.「痕跡なし」と説明する前に、何を調べたかを確かめる

見つからなかった結果には、調べた範囲が伴います。確認したログの種類、保存されている期間、対象システム、確認担当、調査時点を添えて初めて、その説明の意味が分かります。

ログが残っていない期間は、調査して問題がなかった期間とは異なります。外部サービスのログについても、誰が取得でき、どの期間が残り、提供者と利用企業のどちらで確認できるかを整理します。IPAは、サービスごとにログの保有期間や確認できる主体が異なる可能性を踏まえた点検を案内しています。[3]

資料がないことを説明する際も、相手に不要な技術情報や攻撃の手掛かりを詳しく示す必要はありません。調査担当と広報・法務で、本人の判断に必要な範囲の説明へ整理します。「専門的なことなので不明です」と切り離すのではなく、次に何を確認するかを決めます。

確認範囲が狭い結果を「全体で問題なし」と集計しないことも重要です。部署や委託先からの説明をまとめるときは、対象条件と確認時点をそろえられるか確かめてください。

5.根拠・確認状態・対外説明を一組で管理する

対外回答の一文に、根拠と適用範囲をたどれるようにします。専用システム等で事実の識別番号、原資料、確認者、対象範囲、確認日時、判断担当、承認済みの説明を結び付けます。実際の内部管理画面や判断閾値を公開する必要はありません。

図2 説明を短くする前に、三つを照合する

根拠誰が、どの資料を確認したか
言える範囲対象・期間・限界はどこまでか
承認済みの説明その範囲を超えない表現か

調査結果から対外文章へ機械的に変換する図ではありません。事実確認と説明の承認は、担当者がそれぞれ行います。

委託先からの「対象外」という連絡も、連絡を受けた事実と、自社が根拠を確認した状態を分けます。自社の契約、利用期間、アカウント、対象情報に適用できるかを確認し、未照合ならその状態を残します。

不明事項には、確認担当、追加で必要な資料、次の見直し予定を付けます。確認できない理由が判明した場合も、担当欄を消して終えるのではなく、その限界を踏まえて誰が何を判断するかへつなげます。

複数の担当の説明が食い違ったら、文章だけを折衷しません。資料の版、確認した日時、対象範囲が違わないかを調べます。時点が違う説明を一つにまとめることで、どちらの根拠も失わないようにしてください。

6.短い説明でも、確認していない内容を付け足さない

「現時点で」と付けるだけでは、断定の問題は解消しません。何の確認が済み、何が残っているかを、読み手が必要な行動を選べる程度に示します。

避けたい要約

「調査したが流出の証拠がない」から、「漏えいはありません」へ言い換える。

説明の組み立て例

「確認できた記録では、情報が外部へ持ち出されたことを示す痕跡は見つかっていません。ただし、確認できていない範囲があり、対象情報への影響は引き続き調べています。」

この確認状態が事実である場合だけ使う例です。漏えいが既に確認されている事案へ使いません。

避けたい要約

被害申告はあるが関連性が未確認なのに、「二次被害はありません」とする。

説明の組み立て例

「不審な連絡についての申告を受け付けています。今回の事案との関連は確認中です。申告内容を担当へ共有し、必要な案内を行っています。」

実際に受付・連携を行っている場合の例です。未実施の対応を、対応済みと表現しません。

説明では「誰の情報」「どの期間」「どのシステム」を必要に応じて添えます。ただし、少人数の属性や経緯の組合せから本人が特定されないように配慮します。個別の対象有無は、本人確認を伴う別の照会手順で扱います。

不明な人数をゼロと表示したり、最大影響範囲を確認済みの被害人数として載せたりしません。読みやすさのために数字を一つにまとめる場合も、その数字が何を表すかを明記します。

7.確認が進んだら、以前の説明を受けた人へ戻す

新しい結論が出たことと、それが説明に反映されたことは別です。調査担当の報告だけを更新して、窓口が古い説明を続ける状態を避けます。

確認範囲が広がったときは、新たに分かった事実、変わった判断、従来の説明への影響を区別します。「全体が調査中」から「一部の漏えいを確認」へ進んだ場合、判明した部分と未判明の部分を並べて示せます。全対象者が確定するまで、確認済みの事実まで未確認へ戻す必要はありません。

根拠のない断定をしていたなら、単なる続報ではなく誤りの訂正が必要かを確認します。誤りのない暫定説明だった場合も、本人が取るべき行動が変われば追加案内を検討します。実施方法はFAQ更新・再案内の記事で詳しく整理しています。

旧説明は経過確認用に保管し、現在使う回答と区別します。会社の説明、窓口の回答、行政報告がそれぞれ別の確認状態を示していないかも、判断担当が点検します。

8.表現を確かめるチェックと、よくある質問

外へ説明する前の6項目

  • アクセス・閲覧・持ち出し・対象・原因・二次被害を分けた。
  • 確認済みの事実に、原資料・確認者・確認時点がある。
  • 「見つからない」の調査範囲と、確認できない範囲が分かる。
  • 制度上の「おそれ」を、文言だけで判断していない。
  • 人数や対象外の説明が、確認できた範囲を超えていない。
  • 追加判明や訂正を、過去の説明・窓口回答へ戻せる。
「可能性がある」と書けば、法的な報告や通知は不要ですか?

言葉の選び方では決まりません。その時点の事実、対象情報、報告対象となる類型等を確認し、責任者と法務担当等が判断します。漏えい等の確証がなくても、おそれがある事態として対応が必要になる場合があります。

ログがないので、漏えいはなかったと言ってよいですか?

ログが残っていないことは、調査して流出を否定できたこととは異なります。確認できる資料・期間と、調べられない範囲を整理し、その限界を踏まえて判断します。「記録がない」を「発生していない」に置き換えないでください。

マルウェアを検知したら、必ず漏えいのおそれがありますか?

検知だけで直ちに決まるものではありません。実行抑止や外部通信の遮断等も考慮すると、個人情報保護委員会は示しています。技術担当が確認した状況を、報告・通知を判断する担当へ渡します。[2]

委託先が「影響なし」と言えば、そのまま顧客へ伝えられますか?

自社の利用期間や情報項目がその結論の対象に含まれるか、根拠と調査範囲を確認します。説明を受けた事実と、自社の照合結果を分け、承認済みの範囲で案内します。未照合の部分を省略して断定しないようにします。

伝える内容を弱くするのではなく、確認できた範囲に合わせて正確にすることが大切です。事実・限界・判断・次の確認を結び付けると、不確実な状況でも説明を続けられます。

調査結果を、説明と回答へつなぐ実務をご相談ください

サンクネットは、企業や専門家が確認した情報をもとに、FAQ・回答スクリプトの作成支援、問い合わせ窓口、対応履歴、確認待ち案件、集計・報告などの実務を支援します。漏えいの認定や法的責任の判断を代行するのではなく、判断内容を実際の説明へ反映する役割を担います。

「調査報告は届いているが、顧客に答えられる範囲を整理できていない」という場合も、状況の概要と必要な実務からご相談ください。

個人情報漏えい対応支援について相談する

企業・団体のご担当者と、顧客・関係先から相談を受けた専門家・支援会社向けです。原因や対象が未確定でも、概要からご相談いただけます。個別事故の対象者確認・被害申告は、その事故の専用窓口へご連絡ください。初回相談に対象者名簿、身分証、認証情報、機密資料は送らないでください。即時対応や受託を保証するものではありません。

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相談ナビの利用は任意です。利用せずに直接相談できます。

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参考資料・確認範囲

制度・参考資料確認日:2026年10月31日。主に民間企業の一般的な実務を整理しています。法令・公的資料上の制度と、図解・記録方法・文例等の運用提案を区別しています。個別事案の判断は責任者・法務担当者・専門家と確認し、公布と施行を混同せず、公開資料の更新にもご留意ください。

  1. 個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」:3-5-3-1:報告対象と漏えい等のおそれ。3-5-3、3-5-4:報告・本人通知。
  2. 個人情報保護委員会「「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン」に関するQ&A」:Q6-2、Q6-17:閲覧の確認と、マルウェア検知時の考慮事項。
  3. IPA「不正アクセスによる漏えい等の事案を踏まえ、速やかに実施すべき対策等について」:「外部サービスの洗い出し」:ログ保有期間と、確認できる主体の違い。

実務支援範囲の参照:サンクネット「情報漏えい対応支援サービス」。記事の運用案や想定例は、特定の実案件・受託実績を示すものではありません。