情報漏えい対応の現場から|第9回
「分かりません」「確認中です」は、どこまで許されるのか
未確定事項に答えながら、確認と再連絡を止めない方法
この記事で整理すること

「私の情報は含まれていますか」「調査はいつ終わりますか」。窓口で聞かれても、その場では結論が出ないことがあります。曖昧な安心を与えないために「分かりません」と伝える必要はありますが、その一言だけでは、何を待てばよいのかも相手に伝わりません。
未確認の内容を無理に埋めるのではなく、答えられる部分を答え、残る確認と再連絡を引き受けます。この記事では、問い合わせを受けた一件が、確認待ちのまま埋もれないようにする実務を整理します。
最初に押さえる3つのこと
- 答えられる部分を分ける質問全体を「調査中」で止めず、承認済みの事実と案内を伝えます。
- 確認と連絡に担当を置く調べる人と本人へ連絡する人、二つの役割を決めます。
- 結論がなくても連絡する次の連絡は、調査終了の約束とは分けて管理します。
対象読者:事故対応の電話・メール窓口、窓口責任者、回答を承認する事務局・関係部署
民間企業・団体の事故対応窓口向けです。窓口での個別回答と回答待ち管理を扱い、技術調査の方法や公表文の作成、補償判断は扱いません。手順・文例・管理項目は運用案であり、法定の回答様式・一律の回答期限ではありません。
1.「確認中」と答えることと、そこで終わることは違う
「分かりません」「確認中です」を禁止語にすると、担当者が推測で答えたり、まだ決まっていないことを約束したりしかねません。大切なのは、その言葉を使ったかではなく、質問を受けた後に何が動くかです。
一つの問い合わせにも、今答えられることと確認が必要なことが混在します。事故全体の原因は不明でも、公表済みの情報項目、公式な注意案内、受付方法は答えられる場合があります。反対に、氏名を聞いただけで個人別の対象有無を答えることはできません。一般案内と個別照会を分けます。
法令上は、個人情報の取扱いに関する苦情の適切かつ迅速な処理と、そのための体制整備に努めることが求められます。本記事の再連絡管理は、それを実務に落とすための運用案です。「確認中と言えば何日でも待ってもらえる」という根拠にはなりません。[1]
対応中の一件は、まず「何に答えてほしいのか」を短く整理してください。対象者か知りたいのか、今の被害を止めたいのか、補償について尋ねているのか。相手の言葉を丸ごと転送する前に、答えるための問いを分けると、必要な相談先を選びやすくなります。
2.今分かること・未確認事項・確認先・次の連絡をそろえる
「確認中」の説明は、四つの情報を一組にすると、その後の動きが伝わります。本人へ説明する内容と、内部で管理する担当者情報は分け、内部の直通番号や原資料をそのまま渡す必要はありません。
一律の回答様式ではありません。伝える順序と詳しさは、質問と相手の理解に合わせて調整します。
「被害は確認されていません」という説明を使う前には、何を、誰が、いつまで確認したのかを確かめます。調査をまだ依頼していない状態を、調べた結果として見つからなかった状態に置き換えてはいけません。窓口で確認の実施状況が分からない場合は、その範囲を調査担当に問い合わせます。
「私は対象外ですか」という問いに、全体の調査中という説明だけを繰り返さないことも必要です。本人の対象照合がまだなのか、対象情報の抽出が途中なのか、回答の承認待ちなのかを内部で分けます。詳細をすべて相手に見せるのではなく、次に何を確かめるのかを説明できる状態にします。
3.調査結果の期限と、本人へ連絡する予定を分ける
調査終了の見込みがないときに、「明日には分かります」と答えることはできません。一方で、明日までに確認状況を伝えられるかは別に検討できます。結論の確約ではなく、窓口が実行できる連絡の予定を置きます。
内部では、確認担当への回答依頼の期限と、本人へ連絡する予定を分けて登録します。本人への連絡直前に初めて回答の有無を確認するのでは、承認が間に合いません。確認担当からの状況回収、回答の承認、連絡の準備に必要な間隔を、案件の緊急性に合わせて見込みます。
- 確認担当
- 対象照合、事実確認、方針検討など、依頼された問いを引き受ける。答えが出ない場合も、理由と次の確認を返す。
- 回答承認者
- 確認結果をどの範囲で本人に説明できるかを決める。新たな補償や安全性の約束を窓口任せにしない。
- 連絡担当・窓口責任者
- 確認の進捗、承認、本人への連絡予定を管理する。交代時にも担当不在の一件を残さない。
「営業日中」「来週」だけでは受け止め方が分かれます。連絡する日や時間帯、受付時間外にどうなるか、連絡できなかった場合の扱いまで可能な範囲で合わせます。社内の返答目標と、本人に伝えた予定は別項目にします。実行できる見通しがない時刻を、安心してもらうためだけに約束しません。
5.回答待ちは、止まっている場所が分かるように管理する
専用システム等の対応履歴では、「対応中」一つにまとめず、どの仕事が残るかを管理します。受付番号を軸に、確認依頼、受け手の引受け、回答承認、本人への連絡をつなぎます。次の区分は管理上の例であり、社内の実画面や固定の処理基準ではありません。
確認の進捗と連絡結果を一つの「完了」にしません。依頼先の返信があっても、本人への連絡が残ることがあります。
期限超過は、本人から再度連絡が来るまで待たず、窓口責任者が確認します。依頼が届いていない、権限が足りない、複数部署が互いの回答を待っているなど、止まる理由によって動かす相手が変わります。期限だけを延ばして、原因の確認を省かないようにします。
複数回の連絡が同じ案件かどうかを所定の方法で照合し、追加の問いと過去に約束した内容をまとめます。ただし、一件の中に「原因」「補償」「通知の再送」があれば、残件は別に持ちます。一つの回答が出たことを理由に、他の問いまで終了にしません。
引継ぎ時や窓口の終了時は、未引受け、期限超過、承認待ち、連絡不能を抽出します。連絡不能は回答完了ではありません。試した日時・経路、伝言の可否、次の手段と判断者を残し、確認できない連絡先へ繰り返し詳細を送ることは避けます。
6.個別回答の安全と、別の手続が必要な請求を守る
問い合わせの再連絡では、相手が安全に受け取れる方法を確認します。勤務先、家族が使う電話、共用アドレスへの連絡で事故の対象者だと知られることも考えられます。本人確認の手順と、伝言で話してよい範囲は別に決めます。一般案内しか必要でない人から、身分証の写しを一律に集めない運用にします。
開示、訂正、利用停止などの正式な請求を含む場合は、事故窓口の回答待ちと区別して個人情報管理担当へ回します。請求内容に応じた法定手続や対応時期があり、再連絡予定を合意したからといってそれらを先送りできるわけではありません。本人確認で過重な負担を課さない点も確認します。[1]
同様に、調査が続いていても必要な報告・本人通知の判断は別に進めます。通知事項がすべて判明するまで通知不要になる制度ではありません。新しい被害や対象範囲の申告があれば、通常の回答待ちに置かず、責任者へ速やかに共有します。[2]
記録は必要な担当者だけで共有し、原資料の保存先と要約を分けます。返信案の作成を急いでも、未承認AIへ事故情報や個人情報を入力しません。AI利用については個人情報の利用目的や提供先での取扱いの確認が必要であり、「氏名を消したから安全」とも決めつけない運用にします。[3]
7.回答を履歴に戻し、次の応対に使える知識へ整える
確認担当から返信が来たことと、本人の問いへの回答が済んだことは別です。まず、その返信が受付時の問いに答えているか、適用対象と確認時点が合っているかを照合します。曖昧な部分は相談し直し、承認された範囲を本人へ伝えます。
履歴には、使用した回答・根拠の版、承認者、連絡日時と結果、説明しても残った疑問を戻します。「案内済み」の一言だけでは、次の担当者は続きを説明できません。電話で一部だけ回答し、残りはメールで伝える場合も、その分担を残します。
次に、同じ問いが来たとき窓口で答えられるようにできるかを検討します。個別事情だけで成立した判断を一般FAQへ広げず、共通化できる条件を責任者と確認して、FAQ、スクリプト、手順書、担当者への共有に反映します。これは、承認を省いて回答範囲を広げることではありません。
報告は受付件数だけでなく、未引受け、再連絡の予定超過、繰り返し確認が必要な質問、連絡不能の理由をまとめます。窓口だけで解けない原因が見えれば、必要な資料や承認経路を改善できます。回答を出す仕事と、その回答を次へ生かす仕事をつなぐことが、窓口の対応力を高めます。
8.実務チェックと、よくある質問
対応を止めないための6項目
- 現在の回答が、確認した事実・時点・範囲と一致している。
- 未確認の問いごとに、引受けた確認担当と承認者が分かる。
- 内部の確認期限と、本人へ伝えた連絡予定を区別している。
- 進展がなくても、予定の連絡と必要な案内を続けられる。
- 期限超過・連絡不能・複数の残件を埋もれさせない。
- 回答・履歴・再利用可能な知識の更新まで、担当が決まっている。
「確認中です」と答えること自体が不適切ですか?
いいえ。未確認のことを断定しないために必要な場合があります。ただし、何が分かり、何を確認し、誰が次に連絡するかを具体化します。使った言葉だけで対応の良し悪しを決めません。
何営業日以内に回答すればよいですか?
本記事では一律の日数を設けません。緊急性、必要な確認、本人との約束を踏まえて予定を決めます。法定の通知や開示等の請求は別に適用を確認し、社内目標だけで期限を上書きしません。
調査に進展がないときも連絡しますか?
合意した連絡予定があるなら、結果がないことも含めて状況を伝える運用にします。確認先と次の行動を確かめ、見通しのない調査終了日を作らず、次の連絡方法を合わせます。
担当部署へ転送したら窓口の仕事は終わりですか?
終わりではありません。受け手の引受けと、本人へ回答する担当を確認します。確認結果を承認済みの回答として伝え、履歴と残件へ戻すまでを追います。正式に担当を移す場合も、その合意を記録します。
未確定なことがあっても、本人への対応まで止める必要はありません。答えられることを答え、残る確認を進め、約束した連絡を守る。その積み重ねを履歴とFAQへ戻していきます。
回答待ちと再連絡を、窓口の仕事として管理します
サンクネットは、電話・メールの応対、関係部署への確認・相談、承認済みの回答、対応履歴、未回答・再連絡の管理、FAQ・手順書の更新や集計を支援します。確認を外へ渡して終わりにせず、本人へ戻す仕事までつなぎます。原因、法的責任、補償を窓口で独断する業務とは分けて進めます。[4]
状況や必要な業務が整理しきれていない段階でも、差し支えない概要からお知らせください。
企業・団体の担当者、専門家・支援会社向けの相談先です。個別事故の対象者確認や被害申告は、その事故の専用窓口へご連絡ください。初回の相談では対象者名簿、本人確認書類、事故の原資料、認証情報等を送らず、概要のみをお知らせください。即時対応・受託・補償を保証するものではありません。
相談ナビの利用は任意です。利用せずに直接相談できます。
この記事への質問・今後のテーマ要望を送る記事質問は一般的な疑問・テーマ要望の窓口です。個別事故の相談や、対象者からの被害申告の受付とは異なります。
情報漏えい対応支援サービスを見る相談ナビからの下書き引継ぎについて
相談ナビで整理した内容は、ご本人が確認して操作した場合に限り、正式相談フォームの概要欄へ一時的な下書きとして引き継げます。内容はフォーム上で編集・削除でき、連絡先や同意等は自動入力されません。フォームが自動送信されることはなく、ナビを使わず直接相談することもできます。
参考資料・確認範囲
制度・参考資料確認日:2026年11月3日。主に民間企業・団体の一般的な実務を対象とします。法令上の制度、公的な注意・推奨と、記事の運用提案を区別しています。手順・管理項目・文例は法定様式ではありません。個別事案の法務・労務・技術・医療上の判断は、責任者と必要な専門家が確認してください。番号法、業法、海外法令等の適用は別途確認します。
- 個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」:民間部門の一般則。番号法、業法、海外法令等は別途確認。
- 個人情報保護委員会「漏えい等の対応とお役立ち資料」:報告・本人通知と個別問合せ回答の時間管理を混同しない。
- 個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等」:個人情報取扱事業者向け注意点(1)。未承認AIへ入力しないという本記事の運用案とは区別。
- 株式会社サンクネット「個人情報漏洩対応支援サービス」:法令根拠ではなく支援業務の案内。実績件数・即日受託等は加えない。
